10月も半ばになり、大分涼しくなった風が頬をなぜる。
何度も、何度も。

視線の先には泥や砂で汚れたユニフォームを着た彼の姿がある。


下向きに持ったバットを1回、2回、振って、3回目で水平にピッチャーを目指す。
ぴたりと一拍置いて、そしてまた1回、2回、振って、構える。

彼独特のこの一連の動作がツナは好きだった。


ピン、と空気が張り詰める。

ただ見ているだけで伝わる、この緊迫感。




ツナ、ツナ。明日、ツナの誕生日だろ!? 野球の試合があるから昼に時間取れねぇけど、そのかわり、ツナの為に俺、ホームラン打つから。それで許してくれな。




昨日の夜、電話越しに彼は言った。
約束してくれた。

信じている。


ピッチャーが振りかぶる。
彼の肩がぐ、と動いたのがわかった。

ピッチャーの指から放たれたそれは、対峙するのがツナであったら間違いなく空ぶるだろうもの。

しかし彼は。





甲高い音を立てながら白球は、青に飲み込まれていった。








(嗚呼、なんて贅沢なプレゼント!)

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ジャンル外だけど・・・貰っちゃいましたv
爽やかな山本君に乾杯!

07/10/28 夜烏 白羽

 

 

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