ちょっと早いかとも思ったのですが。



そう言って、照れくさそうに彼は笑った。

彼が手に持っているのは彼の瞳や額に浮かべる炎を連想させる青の紙袋で、どうやら自分にくれるものらしい。

朝からひっきりなしに色んなものをもらっているから、どうして彼が自分にものを差し出しているのかは想像がついた。

だって今日は、俺の、15回目の誕生日だ。



わあ、ありがとう! ねぇ開けてもいい!?



まさか彼からもらえるとは思っていなかった俺は嬉しくて、いつもよりはしゃいで言ってみた。

だって彼はあくまでも、父さんを慕っているのであり、俺を慕ってそばにいてくれてるんじゃないから。

彼が、俺の為に、俺だけの為に用意してくれたプレゼントに、俺の心は躍った。



つまらないものなのですが、喜んでいただけると嬉しいです。



つまらないもの、なんて! 彼からのものは全部全部嬉しいのに!(まぁ最後に会った時、去り際に渡された死ぬ気丸は正直あんまり嬉しくなかったけれど)



バサバサと袋を開けて出てきたのは、オレンジと白のボーダーのマフラーだった。

マフラーの端には赤い糸で、大きく27と編んである。

きっとこれは彼の手編みなのだろう。

ああ、一番最初に言っていた、ちょっと早いとはこういう事か。確かにまだマフラーをするには早い。

変に納得してしまった俺は、お礼を言うのも忘れていたらしい。

おずおず、という表現が一番しっくりくる様子で彼は言った。



あの…………お気に召しませんでした………?



違うよ違うんだよ。

嬉しくて声が出なかっただけなんだ。

ただ、そういうのもなんだか恥ずかしくて、俺はありがとう、と言うに留めておいた。



ありがとう、バジル君! すごく嬉しいよ!



にっこり笑って礼を言えば、返ってくる穏やかな笑顔。

あえてそれを形容するならば。


癒し系。

清純派。

大和撫子。

しかしどれもしっくりこない。

彼は言った。



暗くなってきましたし、早く帰りましょう。夜道は危ないですからね。ああ、今日の夕餉は拙者も手伝ったんです。奈々殿に習って煮物に挑戦しました。お口に合うといいんですが………。



そうだ、彼はまさしく。



良妻賢母。



バジル君、いいお母さんになれるよ……。






彼からもらったマフラーはとてもとても、暖かかった。

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ジャンル外だけど・・・貰っちゃいましたv
健気なバジル君に乾杯!

07/10/28 夜烏 白羽

 

 

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