「わ、私と、付き合ってください!」


 あぁもう、またか。








ずっと前から君がすき








 一年の修行の旅から帰ってきた後、俺に対する周囲の反応はがらりと変わっていた。


 狐、狐と蔑んでいた里人達は一変。

 馬鹿だドベだと嘲笑っていた女達は激変。

 悪い変化ではないとは思うものの、やはり納得のいかないものが残るのは仕方がない。


 変わらないものなどないと知っている。

 俺だって変わった。

 背は伸びたし、落ち着きも出てきた。その他にも、たくさんの事が変わったのだろう。


 けれど、里に帰ってきて一番に向かった先にいた彼女の笑顔は、一年前と全然変わっていなかった。



 ただ一つの誤算は、彼女―――山中いのが、予想以上に綺麗になっていた事だろうか。







「ず、ずっと……好きだったんです」


 もじもじとしながら、俺の前に立つ女の子は言った。

 ずっとって、いつからだよ。

 そう言いたくなるもの仕方がないと思いたい。四年前はまるで相手にしてなかったのに。


 正直な話、毎日毎日懲りずにくる呼び出しにはうんざりしていた。

 うんざりしすぎて、自分から進んで任務をもらいに行くくらいだ。
(呼ぶ暇があるならお前が来い)
(………言えたらどんなに楽だろうか)
(最近になってやっとサスケの気持ちがわかった。羨ましがってごめん。マジごめん。同情する)


 俺は頭一つ分下にある彼女の顔を見た。

 一般的に言えば、可愛い分類に入るだろう容姿。でも。


(いのの方が、可愛いなぁ)


 まだ何か言っている女の子から視線を外して、ちらり、少し離れた茂みの中に目をやった。

 本人はうまく隠れているつもりだろうが、気配がだだ漏れの上、風が吹くたびにゆらゆらと揺れる白金の髪が、茂みの中の人物を教えていた。


 彼女の性格をそのまま表したように真っ直ぐでクセのない白金の髪。

 明るく澄んだ青い瞳。

 正直な彼女はキツく見られがちだけれど、本当はすごく優しくて傷つきやすいと知っている。

 それだけ見てきた。ずっと前から。




「ナルト君、付き合ってる人いないし……、私にもまだ、チャンス、あるかなって………」


 だから、この娘には悪いけど。


「ありがとう」


 これ以上の言葉は、あげられない。


「でも俺、好きな人いるから。ごめん、応えられない」



 そう言うと、女の子は一気に眼を潤ませた。

 良心が痛むけれど、ここでほだされるわけにはいかない。だって俺が好きなのはこの娘じゃない。


「そ……か、ありがと、ごめんなさい……っ」


 今にも泣き出しそうな声で(というかちょっと泣いてた)そう言って、女の子は走って行った。

 一人残された俺は複雑な気分で溜息を吐き、髪をがしがしとかきまぜる。


 俺にも好きな娘がいて、もしそのこにフラれたら、とか思うとやるせない気分になってくる。

 むしろ確実にフラれる。だって彼女が好きなのはサスケなのだから。

 そう考えて、茂みの中に隠れている(つもりになっている)いのを見た。

 いのはさっき見た時と変わらず白金の髪を風に遊ばせていて、けれど俺に背を向けていた。

 それをいい事にそろりそろりと近づくと、


「好きな人………かぁ」


 小さな小さな呟きは、それでも俺の耳に届いて。

 いのが少しでも俺の事を気にしているのかと思うと、すっげぇ嬉しくて。

 思わず声をかけてしまった。


「知りたい?」

「うん。……………て、え!?」


 急いで振り向いたいのの瞳は、驚きに見開かれていた。

 徐々に増していく顔の赤み。いのは慌てたように俺の名を呼んだ。


「のぞき見とはいい趣味だな、いの?」

「の、のぞき見なんかじゃないわよぅ〜」

「目が泳いでるぞ」


 説得力ないな、とからかうように笑うと、いのは困ったような焦ったような軽く泣きそうな表情を浮かべて俯いた。


 あぁもう、可愛いなちくしょう!!


 こほんと一つ咳払いして、今にもゆるみそうになる顔の筋肉を引き締めて、俺はいのの前に座り込んだ。

 体格差がある為に、俯くいのの顔はわからない。

 けれど、さらりと流れる白金の合間から見える小さな耳は、熱を集めて真っ赤だった。


 このリアクションは、期待しても、いいんだろうか?


 もう一度俺は言った。


「知りたい?」


 その問いは真剣そのもの。

 もしいのが是と答えたら、言おう。覚悟を決めよう。

 それで駄目だったら―――惚れさせるまで。


 いのが小さく、本当にわずかに頷いたのが見えた。

 
「それは―――……」


 俺の唇がいのの耳に触れる。

 細い体がぴくりとふるえた。



「隠れてるのに隠れきれてない、意地っ張りで素直じゃないけど、可愛い可愛い女の子だってば」



 髪の毛、見えてたぞ?


 はじかれたように顔を上げたいのの顔は、驚きやら何やらで上気していて。

 漸く見えた青の瞳に映る俺の顔は、恥ずかしくなるくらい満面の笑みを浮かべていたけれど。

 それでも、彼女がとてもとてもやわらかく、綺麗に笑うものだから。



 全てどうでもよくなってしまうのです。





 




スレではない感じですね。
でもスレであろうとなかろうと、ナルトは成長するととんでもなく漢前になると思います。
 

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響様が素敵なフリーをしていたので掻っ攫っちゃいましたv
ナ、ナル君男前・・・素敵!
ナルいの好きだわ本当にvV

07/08/14 夜烏 白羽

 

 

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