「ゴホ、ゴホッ・・・ッッ!」
任務帰り、月の綺麗な夜だった。
行き成り咳き込んだ俺はその場に崩れるように座り込む。
止まらない咳、力が抜けていく身体。
口元を押さえていた手を見ると、真っ赤だった。
とうとう身体を支えられなくなり、俺はその場に崩れ落ちる。
仰向けに倒れ、目線の先には木々の間から見える綺麗な月。
―――紅い、紅い不気味な月。
視界から消すように目を手で覆った。
「やめてくれよ・・・、」
―――やっと手に入れたんだ。
今まで偽りの仲間でしかなかった、今までただの護衛対象でしかなかった。
でもいつの間にか大切な、護りたい存在になって。
俺の偽りに気が付いてくれた。
拒絶しようとした俺に、バレた現実から眼を背けようとした俺に、手を差し伸べてくれて。
血塗れた俺を、穢れた俺を、醜い俺を、弱い俺を、
・・・本当の俺を知っても、まだ『仲間』と言ってくれて。
大切な仲間達、やっと手に入れたんだ。
今まで自分が忌み子だから、自分が汚らわしい存在だからと諦めていて、
それでも心の何所かで、狂おしいほど求めていたモノ。
―――これからなんだ・・・。
今まで独りだった。
心の底から信じられるのはじっちゃん一人で、でもそのじっちゃんを護りきれなくて、
じっちゃんがこの世からいなくなって。
ずっとずっと、寂しかった。
でもこれからは違う。仲間がいてくれる。
―――これから、なのにっ!
身体を蝕む、俺の腹の中の化け物。
自らの
死期 なんて随分前から悟っていた。
死期 なんて怖くなかった。でも希望を手にしてしまった今、どうしても
死期 が怖い。
「奪わないでくれ・・・ッ!」
平穏な日々、
仲間達と共にある未来。
絶望を知る
壊れかける身体が酷く憎かった。
+++++あとがき++++++++++
NOCP。バレ後のスレナル。
やっと幸せを掴んだのに一気に闇に突き落とされる。
・・・一番残酷ですよね。07/12/15 夜烏白羽