戦場の賛美歌
その日、いつもより下忍任務が終ったのが遅かった。
そのせいでいつも水をあげに行っている公園の花壇に行けなくて、
だからしょうがなく家に帰って、
パパとママと夕飯食べてその後お風呂に入って、
でも寝ようとしても気になるのは花壇のこと。
気になって気になって、眠れなくて、
しょうがないから家を抜け出して花壇を見に行った。
『夜の里は暗部の仕事場所』
それが里人達の暗黙の了解だったし、
『暗部の任務を目撃したものは記憶を消すか抹殺される』
これも衆知の事実だった。
だから行き、周りに警戒して花壇まで行った。
花壇はいつも通りで安心して、
水と肥料を少し上げてすぐにその場を後にした。
・・・気が緩んでいたのかもしれない。
気が付くと、辺りには強い殺気、
そして武器を弾く金属音、そして肉を切り裂く音が響いていた。
思わず体が強張る。
――― どうしよう、どうしよう!
すぐ近くで、暗部が任務をしている。
見つかる。
下手したら敵の忍に捕まって殺されるかもしれない。
強い殺気に当てられ、悲鳴を上げそうになる唇を押さえ、
恐怖でガタガタ震える足に叱咤をする。
――― って、わたしは何をしているの!
我に帰り、唇をかみ締める。
――― わたしは下忍、もうアカデミー生じゃない。
クナイを取り出し、構える。
――― 一人前の、立派なくノ一なんだから・・・ッ!
気配が近づいてくる。
猛スピードでこっちに。
クナイを握る手を強め、
気配の方へを目を向けた。
出てきたのは、傷を負った多勢の霧隠れの暗部だった。
霧忍は目配せをすると、
一斉に襲い掛かってきた。
利き手は何とか守ったけど、左手を切り裂かれた。
「―――ッ!」
痛みに小さな声を漏らす。
でも何とか応戦しようとクナイを振り下ろす。
その時、
――― ・・・・・・・・・・え?
「・・・・・う・・・た・・・・・・・・・・・・?」
歌が聞こえる。
とっても綺麗な歌だ。
霧忍は面で顔は見えないが、明らかに恐怖で動揺している。
歌が次第にハッキリと聞こえてくる。
守り神
背きし愚か人
血の報いを
哀しみの中
災いは怒り狂う
目の前の霧忍の首が切り飛ばされる。
噴出す血を被りながら、呆然と歌に聞き惚れた。
闇に溶けた災い
光より生まれし闇の子
神子となりて忌み子となる
次々と刎ね飛ばされる首。
その狂乱の中、
狐面をした金色の人が舞う。
偽りを偽りのまま
真実は闇の中
気付かぬ愚か人
知ろうとせず無智な子供
闇は深まる
その人が歌う哀しい歌。
思わず、涙が流れた。
偽りの幸福は
儚く消えゆくだろう
光
忌み子知りたくば
真実知りたくば
闇に堕ちよ
偽りの光は要らぬ
光望むなら
全ては消えゆく
真実の闇に守り神は住まう
忌み子は偽りの光の中
闇を舞う
歌が途切れる。
いつのまにか全ての霧忍は死に絶え、
その人は血溜りの中に立っていた。
「浄炎。」
小さく呟くと、瞬く間に炎が死体を覆う。
青い炎の中、狐面の暗部はわたしに歩み寄る。
「闇を目にした光の住人よ、
お前は、何を、望む・・・?」
歌うように、その人は尋ねる。
お前は愚か人か?
それとも―――
「わた、しは・・・ッ」
無意識に、
自分でも何でそう答えたのかわからない。
でも、
「闇の中、
住まう忌み子・・・否、神子と共に!」
知らずに、そう答えた。
―――魅入られた。
仮面の奥、
深い海のような、
広い空のような、
純粋で真っすぐな蒼い瞳に。
―――惹きつけられた。
輝く太陽のような、
妖美な月のような、
黄金色の髪に、
その人の存在自体に。
「 ナ ル ト ! 」
何でその名が出たのかはわからない。
だって、確かに色彩はその人を同じだけど、
まったく違うのに。
全然違うのに。
別にその名の者と接点があったわけでもない、
親しかったわけでもない。
でも、自然とその名を口にしていた。
クスリと、狐面の下その人は笑う。
そして、優雅な動作で面を取った。
「 正 解 。 」
そこにはいつもの太陽のような笑顔ではなく、
月のような冷たい微笑があった。
その人―――ナルトは、手を上げ、
差し伸べる。
「闇を知り、闇に身を堕とし、闇に蝕まれ、
それでも戻れぬ深き闇に生きる覚悟は、あるか?」
『い』、『の』、と、
その口が二文字を紡ぐ。
「・・・勿論。」
立ち上がり、
そっとその手を掴んだ。
「貴方と共なら、どこまでも。」
いつもより下忍任務終了が遅かったのは?
―――偶然。
なら、異様に花壇が気になったのは?
―――偶然。
金色の彼に、出逢ったのは?
―――必然。
闇に堕ちし子供が一人
神子へ寄り添う
+++++あとがき++++++++++
スレナルノマいののバレ?ネタ。
意味不明。
雰囲気重視、・・・のつもり。
てかいのちゃん、一目ぼれデスカ?
・・・どっちかっていうとナルトも一目ぼれ??07/08/03 夜烏 白羽