世界は変わらず巡る。
朝が来て昼が過ぎて夜になる。
世界は変わらない。
彼が愛した里
私達の日常も変わりはしないの。
毎日同じことの繰り返し。
朝が来て仮面を被り、
昼が過ぎてつまらない護衛任務、
そして夜が来てヒトゴロシ任務。
暗殺、偵察、殲滅、拷問、色。
血に染まって穢れて、
それでも世界は変わらない。
でも彼がいる。
私の隣には彼がいる。
彼は穢れない。
どんなに返り血を浴びようと、
彼の輝きは消えないの。
だから私は世界を受け入れた。
愚かな世界、変わらない世界は巡る。
浅はかで醜くい愚かな里。
でも、
彼が愛してる里。
でも今は、
彼を奪った里。
赦せない赦さない。
彼の加護に気付かず、彼を傷つけ続けた里、この世界!
そして最期は彼を奪った!!
愚かな里に天罰を!!!
轟々と、里は燃えゆく。
逃げ回る人々、泣き叫ぶ人々、嗚呼愚かな里人。
逃がしはしない、これは罰なのだから。
嗚呼、彼が愛した里が壊れゆく。
彼は私を怒るかしら?嫌いになるかしら?
「ヒナタ!」
不意に、誰かに名前を呼ばれた。
いいえ、誰かなんてわかってる。
「なぁに、綱手様?」
振り返らずとも戸惑いが手に取るようにわかるの。
だって貴女はいつだってそう。
気付かず気が付いた時には全てが手遅れ。
「返すわ。」
私は手の中の物を後ろに放る。
手を伸ばし受け止めた貴女が息を飲むのがわかった。
「貴女の弟、縄樹。貴女の恋人、ダン。そして―――・・・」
私はそこで言葉を止める。
貴女が崩れ落ちるのがわかったから。
「・・・愚かな里人の中で、貴女と三代目だけだったわ。
私達の裏も表も知り、尚も手を差し伸べてくれたのは。」
それは偽りの無い、素直な気持ち。
ええ、貴女には感謝しているの。
でも同時にとても憎いの。
だって貴女は気付かなかった。気が付いた時には手遅れ。
彼が奪われていくのを、貴女は声を上げて止めようとしてくれた。
でも貴女は無力で浅はか。
混沌のうねりは止められず、狂乱の宴は狂喜に満ちる。
「ぁ・・・ッ!ぅく、ぁ・・・。」
静かだったその場に、すすり泣く声が響く。
きつく握りしめる、手の中の首飾り。
その持ち主は、もういない。
「・・・・・・・・。」
嗚呼、何で涙を流すの!
憎い、憎い憎い、赦さない!!
―――なのに、それじゃあ、
「殺せないじゃない・・・。」
全て殺すつもりだった。
愚かな里人も、腐った上層部も、
殺した、誰一人残らず。
例え偽りの仮面しか知らなくても、それでも大切だった、
温かい場所をくれた仲間達も、
皆、躊躇無く殺せたのに!
「そんな貴女じゃ、殺せない。」
怒ると思ってたのに、咎めると思ってたのに。
貴女はただ哀しみに涙を流す。
「・・・ヒナタ。」
落ち着いたのか、小さく私を呼ぶ。
私は振り向かず、ただ壊れゆく里を見つめる。
「わたしはお前達を大切に想っていた。
・・・この里以上に、な。」
ええ、知ってる。
でも貴女は火影で、
そんな存在を作ってはいけないことも、知ってる。
でも里のことも大切に想っていることも知っているの。
例えそれが次点であっても、大切で愛しかったのを知っている。
だから、何も出来なかったのを知っている。
「ありがとう。」
愛してくれて。こんな狂った私でも、慈しんでくれて。
でも私は貴女に残酷な道を歩ませます。
だって貴女の罪は重いもの。
「貴女は生きて、生きて生き抜いてください。
そして一生十字架を背負っていてください。」
最も貴女にはつらいでしょう。
でも罪を償ってください。
貴女は無力で愚かで憎い人。
だからこそ一番残酷な罰を、貴女に。
「私はこれから彼の元へ行きます。」
私はゆっくりと振り向いた。
―――久しぶりに見る貴女の顔は、やつれていて、
それでも私に向ける瞳は変わらない。
「・・・さようなら。ナルトと幸せに、な。」
嗚呼。
本当は引き止めたいんでしょう?
でも貴女は泣きながら微笑んで、私を見送る。
「・・・・・・・・・・・、」
私は無言で自らの首筋にクナイを当てた。
冷たい刃の感触、でも彼の元に行ける歓喜で、感覚は麻痺。
「 さ よ う な ら 。 」
自分の血で目の前が染まる。
真っ赤、真っ赤、真っ赤。
暗転。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
綱手は静かにソレを見ていた。
屍は蒼い炎に包まれ、消えゆく。
炎の向こう、金色の彼と琥珀の少女が並んで幸せそうに微笑んでいる気がした。
その日、忍里最強と謳われた木の葉は消えた。
それでも、
世界は変わらず巡る。
朝が来て昼が過ぎて夜になる。
世界は変わらない。
彼が愛した里が滅びても
+++++あとがき++++++++++
背景花言葉「別れの悲しみ」。
なんてこったい又死ネタ。
病んでますスレヒナ。
書きたかったのはスレナルとスレヒナの絆。
なのに気が付けば綱手とスレヒナの絆。
何故だ。
最近スランプで思い通りに行きません。
ナルヒナは何故かダークになります。07/11/03 夜烏白羽