昔、木ノ葉という里に、九尾の妖狐が襲ってきました。
人々は戦い、
傷付き、
たくさんの人が死んでいきました。
そんな時、
戦場に、一人の男が降り立ちました。
黄金色の髪、深い海のような蒼い瞳。
そして、男の腕の中には小さな赤子が一人。
男は自分の命と引き換えに、九尾を赤子の腹部へ封印しました。
流れる血、
泣き叫ぶ赤子、
封印されていく九尾、
倒れる、男。
九尾を封印したことで歓びの叫びを人々があげる中、
男は小さく、愛しそうに赤子の頬を撫でながら、呟きました。
「ごめんね、ごめんね。
パパ失格だよね。君にこんな酷いことして。
生きて、生きて。
負けないで、パパやママの分まで、生きて。
君は里を救った英雄なんだよ。
こんなことでしか里を守れないパパのことなんか、
恨んで良いから、憎んで良いから、
強く、生きて。
愛してるよ―――ナル君・・・。」
その呟きは、
人々のざわめきの中に掻き消され、
男は涙を流すと、
事切れた。
―――しかし、
男の願いは届くことはなく、
『英雄』の名は九尾を封印した男にのみ与えられ、
赤子は『忌み子』として、
人々からの憎悪をその身に浴びて育った・・・。
戒
そして、
三年の月日が流れた。
『忌み子』となった赤子は、
自分を育て、ただ一人愛情をくれた老人の前にいた。
三歳になった赤子の名は――『うずまきナルト』。
黄金色の髪と深い海のような蒼い瞳、
小さく、細く、壊れてしまいそうな体。
そして、その中に秘めた父より受け継ぎし、類まれなる天武の才能。
「じっちゃん、お願いがあるんだ。」
ハッキリとした発音、
子供に似合わぬ王者の貫禄。
ナルトは、僅か三歳にしてソレを持ち合わせていた。
「どうしたんじゃナルト?珍しいのぉ。」
老人――三代目火影は滅多にないナルトからの『お願い』に頬を緩ませる。
しかし、ナルトが放った言葉に、火影は見事固まった。
「俺を、暗部に入れて。」
ニコニコと、まるで「お菓子ちょうだいv」とでも言うように言ったナルトは、
期待に胸を弾ませ、火影を見つめていた。
漸く石化からとけた火影は、「ならん!!!」と叫んだ。
「ナルト、暗部がどんなことをするか知っておるだろう?
人を殺すのじゃぞ?危険で死と隣り合わせな任務ばかりなのじゃぞ?」
「うん、知ってるよそれくらい。
だって暗部のお兄さん達よく俺を殺そうと来るもん。」
あっけらかんと言うナルトの言葉に、火影は顔を歪ませた。
―――事実、ナルトは生まれてからというもの、
幾度となく暗殺の対象となっていた。
九尾とナルトを同一視し、憎む人間は後を立たない。
・・・全て未遂に終ったが。
「それに、人を殺すのだって今更。
俺は俺を殺そうとするお兄さん達を一人残らず殺してきた。
もう手遅れ。
それに、俺の実力はじっちゃんが一番知ってるでしょ?」
ナルトがはじめて人を殺したのは、ナルトが生まれてまだ半年に満たない頃。
襲ってきた暗殺者に対し、九尾の力が暴走、
騒ぎを聞きつけた火影が駆けつけたときには、ナルトは紅く染まっていた。
―――それからというもの、火影はナルトに修行をつけた。
自分の身を守る為、
九尾をコントロールする為、
ナルトの為に、火影は自分の知識と技を全てナルトに叩き込んだ。
もともとの才能なのか、ナルトは瞬く間に覚え、強くなっていき、
今では火影をも越える実力者になった。
本来、器にさえされなければ里の宝となっていただろう力。
火影はいつも、そう嘆いていた。
「・・・しかし、ナル 「それに今、忍不足なんでしょ?」
火影の言葉を遮り、ナルトは言った。
「確かにこの里は、俺を拒絶して、俺に憎悪を向ける。
でも、この里はじっちゃんが愛してる里なんだ。
父さんが命を掛けて守った里なんだ。
だから俺も、この里を守りたい。
・・・まだ、俺がこの里をじっちゃん達みたいに愛せるかわかんないけど、
それでも、この里を、守りたいんだ。
―――・・・駄目?」
ナルトは火影を真っすぐと見つける。
強い、意志が宿った瞳。
「ナルトの実力が表に出れば、拒絶されかねないんじゃぞ?」
「構わない。裏で生きる。表では実力を隠す。
それが俺の選んだ道だ!」
真っすぐで、純粋な瞳。
―――火影は小さく、ため息をついた。
「宜しい、許可しよう。」
「!!!」
ナルトの顔が喜びに染まる。
「ありがとう!大好きじっちゃん!!!」
「こ、これ、ナルト!」
ナルトは喜びのあまり火影に抱きつく。
火影はナルトの様子を見て、心中複雑だった。
「―――では、問題は暗部名と暗部面じゃな 「『戒』がいい。」
火影の言葉を、ナルトは遮る。
「『戒』・・・?」
「うん、『戒』がいい。
そんで面は『狐』にして。」
「しっしかし!ナ 「これは、俺への戒めなの。」
ナルトは続ける。
「俺は『忌み子』で『器』だから。
俺の存在自体が罪だから。
・・・だから、これは戒めなの。
俺にはこの名しかない、前々から思っていたことだから。
―――だから、お願い。
火影様、俺に、
『戒』という暗部名と、
『狐』の暗部面を、与えてください。
俺は貴方様に忠誠を誓い、この里を災厄から守ると誓いましょう。」
ナルトはそのまま、片膝を付き、頭を垂れた。
―――嗚呼、
なんと、優しい子じゃ。
火影は想う。
なんて、哀しい子じゃ・・・、と・・・・・。
「―――・・・わかった、命じよう。
うずまきナルト。本日より、
暗部に身を置き、火影と里への忠誠を誓え。
お前に、暗部名『戒』と、
暗部面『狐』を与える!」
「・・・拝命いたしました。」
『忌み子』は、
『守護神』となり、
里も守り続ける―――――。
+++++あとがき++++++++++
序章です。
ナルト二歳暗部入隊です。
・・・ナルトの性格わかりましたか?
説明を含めて、纏めてみました。07/08/01 夜烏 白羽
二歳→三歳に修正。(いくらなんでもと思って・・・)
07/08/05 夜烏 白羽