昔、木ノ葉という里に九尾の妖狐が襲ってきました。
人々は戦いました。
自らの身を守る為、大切な人を護る為、傷付きながら、戦いました。
そして、沢山の人が死んでいきました。人々は無力でした。
昔も今も、驕りだけで生きてきた愚かな生き物だから。誰よりも脆くて弱い。
絶望が心を蝕み、支配しました。
そんな時でした。
絶望が蠢くその戦場に、一人の男が降り立ったのです。
眩しい黄金色の髪と、澄み切った空のような蒼い瞳。
腕の中には、小さな赤子が一人泣いていました。
男は自分の命と引き換えに、九尾を赤子の腹部へ封印しました。
流れる血と、泣き叫ぶ赤子。
封印されていく九尾と、
倒れる、男。
九尾に勝った。
男が里を救ったのだ!
人々は歓喜の叫びを上げました。
ただ生きている喜びを、取り戻した希望を、味わうように。
狂ったように喜び続けました。
歓声の中、男は倒れました。
それでも男は、腕の中の赤子を愛しそうに撫でながら、呟きました。
「ごめん、ごめんね。
こんな酷い事しかできなくて、僕はパパ失格だね。
僕の事は恨んで良いから、憎んで良いから、生きて。
君は里を救った英雄なんだよ。
だから僕とクシナの分まで、生きて。
負けないで、強く、生きて。
愛してるよ―――――ナルト・・・」
その呟きは人々のざわめきの中に掻き消されました。
届くことの無いその想いと一緒に。
数人の忍が男の元へ駆け寄ってきました。
でも、もう遅くて・・・。
男は一筋の涙を流すと、
事切れました。
そして、
“英雄”の名は九尾を封印した男にのみ与えられ、
赤子は“忌み子”として、人々の憎悪と醜悪をその身に浴びて育ちました―――。
戒
そして、三年の月日が流れたのです。
+++++あとがき++++++++++
キリが良いのでこの辺で。
プロローグという名の序章です。
08/03/27 夜烏白羽
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