忌み子が守護神として里を守るようになって、
早くも半年が過ぎた―――。
「じっちゃん、任務頂戴。」
「・・・窓から入るなと言っているじゃろう。」
炎1
里を一望できる火影執務室。
そこに、金色の子供と老人がいた。
金色の子供は、名を『うずまきナルト』といい、
亡き四代目の嫡子でありながら、九尾の妖狐の器となった少年である。
僅か三歳で開花したその才能を表に出すことすら出来ず、
里人から憎悪を一身に受けて育った『忌み子』であり『神子』である。
そして、ナルトにはもう一つ名前があった。
それは――暗部名『戒』。
『木ノ葉の守護神』
『狂乱の神子』
等の異名を持つナルトのもう一つの姿だ。
半年前、
三代目火影である老人を気遣い、
忍不足である里を守るため、ナルトは自ら暗部に志願した。
そして今では、暗部総隊長にまで登りつめた。
「今更じゃん、そんなの。
それよりに〜ん〜む〜〜ッ!!」
可愛らしく頬を膨らませ、起こられたことをサラリと流す。
火影は机の引き出しから『SSS』と書かれた巻物を出した。
「今回はSSS四件じゃ。
・・・気を付けるのじゃぞ、ナルト。」
SSSとは、本来暗部分隊長クラスが五人がかりで取り組む任務だが、
ナルトが単独任務を望んでいるという理由と、また、ナルトならば一人でも然程問題ないという理由で、
今は全てナルトが行っている。
「・・・誰に向かって言ってんの?俺は里最強の戒様だぜ??」
子供に似合わない妖美な笑みを浮かべると、
ナルトは狐面をつけ、その場から消えた。
「・・・・・はぁ。」
火影はナルトがいなくなった部屋で、深いため息をついた。
火影のため息の理由は二つ。
一つは、小さな子供に暗殺や殲滅という任務を渡しているということの罪悪感。
そして、
「どうしようかのぉ・・・。」
里上層部で決まった、『器の監視兼護衛命令』。
今までナルトには沢山の『監視兼護衛』がついた。
しかし、その多くがナルトを殺そうとしたのだ。
その中、ナルトは身を守る為その相手を殺す力を実につけた。
・・・だが、ナルトは優しいのだ。
ナルトはいくら自分を殺そうとした相手でも、強い罪悪感を感じていた。
何より、殺せば殺すほど、火影が哀しむとナルトは気付いていた。
―――火影はナルトを哀しませぬよう、上層部の眼を欺いて、現在『監視兼護衛』をつけていなかったのだ。
「・・・困った。」
だが、それでも限界は来る。
上層部が感づき、早くしろと催促が来たのだ。
その時、執務室の扉を軽くノック音が響いた。
「炎にございます。任務を受け取りに参りました。」
「・・・宜しい、入れ。」
「失礼します。」と寅面の少年が執務室に足を入れる。
少年は火影の前まで来ると、面を取り片膝を付いた。
面の下には・・・黒髪に黒い眼。
まだ幼く、歳は十代に入るか入らないかだろう。
幼きその身を闇に置く少年が、ココにも一人。
「炎――いや、イタチよ。
任務は慣れたか?」
炎――『うちはイタチ』は、正しくは暗部ではない。
まだ暗部見習いなのだ。
イタチは幼くし、写輪眼を開眼。
その才能により、一族の為に、
今暗部に身を置いている。
「いえ、まだ慣れませんが、少しずつ何かを掴めてきています。
ご心配には及びません。『炎』は里の駒です。」
頭を下げたまま、イタチは抑揚も無く言った。
―――・・・そして、一族の駒です。
イタチは心の中で呟いた。
火影は眼を細める。
「・・・イタチよ、お前に特別任務を与える。」
火影はイタチを見つめ、彼の金色の子供を思い出しながら言った。
+++++なかがき++++++++++
炎改めイタチ編。
炎はエンと読みます。07/08/06 夜烏 白羽