闇が辺りを包む夜――、
断発魔が響く。
血溜りの中、返り血を浴びた子供が立っていた。
「任務完了。浄炎。」
子供は小さく呟いた。
炎2
辺りを包む炎を気にせず、
子供はある一点を見つめる。
「・・・・・で、そこにいるのは誰?」
子供が殺気を放つと、観念したように一人の暗部が降りてきた。
「ふ〜ん、木ノ葉の暗部?いや、見習いかな?気配消しきれてなかったし。」
「・・・・・・。」
楽しそうに話しかける子供に対し、暗部は黙ったままだ。
「で、どうして欲しい?」
コ ロ シ テ ホ シ イ ・ ・ ・ ?
子供はニッコリと殺気を乗せて問いかける。
暗部はたじろぐこともせず、やっと口を開いた。
「君が戒総隊長・・・いえ、『うずまきナルト』ですね?」
言った瞬間、暗部の寅面が真っ二つに割れる。
ナルトがクナイを放ったのだ。
本来、クナイを受けても割れないはずの暗部面が、いとも簡単に割れてしまったことと、
眼に捉えられぬそのモーションの速さから、ナルトの実力がうかがえる。
面の下から現れたのは・・・うちは一族の秘宝、『写輪眼』。
暗部は、炎――うちはイタチだった。
「へぇ、うちは一族ね。
あの一族俺のこと大っ嫌いだもんね〜。何回暗殺されかけたか。
で、お前の目的は?
さっきは手加減したけど、今度は脳天貫通してあげるよ。」
楽しそうにクナイを構えるナルト。
イタチは平然と、言った。
「別に殺すなら殺してください。
俺は一族の駒になりたくない。」
その言葉に、ナルトは目を見開く。
「・・・変わってるね、あんた。」
クナイをしまうと、ナルトは周囲に高度な結界を張った。
ナルトは狐面と外し、妖美に微笑む。
「訳を聞いてあげる。殺すのはその後ね。」
+++++
「・・・イタチよ、お前に特別任務を与える。」
火影の言葉に、イタチは眉をひそめる。
「俺はまだ暗部見習いです。
それに、任務は一族を通してくださるようお願いします。」
イタチが言うと、火影は首を横に振った。
「これはイタチにしか出来ぬ。
それに、一族を通すことも出来ぬ、極秘任務じゃ。」
イタチはさらに眉をひそめる。
「火影命令じゃ。
詳しくはこれに書いてある。
何だったら自分の眼で確かめてくるといい。居場所はココじゃ。」
火影はイタチに一枚の書類と一枚のメモを手渡す。
「・・・・・拝命いたしました。」
+++++
「つまり、あんたが今度の『監視兼護衛』ってこと?」
ナルトはイタチから渡された書類を見て言った。
「ああ。」
とイタチは短く答える。
「・・・それで、何で殺して欲しいの?
確かうちはは『器排除派』で有名だけど、俺を殺さないの?」
立場が逆じゃん、と、ナルトはイタチを見る。
すると、イタチは語りだした。
「・・・一族は愚かだ。
俺は器を・・・君を殺そうとは思わない。
だが、一族はソレを赦しはしない。」
イタチは真っすぐナルトを見つめる。
「俺は勝手に死ぬことも赦されない。
・・・だが、君ほどの実力があれば、俺を殺せるだろう?
さっきも言った通り、俺は一族の駒になりたくない!」
声を荒げ、イタチが言う。
ナルトは面白そうに眼を細めた。
「・・・アンタ、名は?」
唐突なナルトの質問に、イタチは少し目を見開く。
しかし、取り乱すことはせず、静かに答えた。
「・・・うちはイタチ。暗部名は『炎』だ。」
「へぇ〜。」
ナルトは思案顔になる。
「確か、本家の嫡子だったよね?
いいの?あんたが死ねば、今度はアンタの弟が一族の駒だよ?」
「!!!」
このとき、初めてイタチは取り乱した。
―――そうだ、俺は!
眼に浮かぶ、幼い弟。
守らねばならない、存在。
「それに、せっかくじっちゃんから良い暗部名貰ってんのに、消しちゃ駄目だよ。」
「・・・・・は?」
またしても突拍子も無いナルトの言葉、
イタチは思わず聞き返した。
「だって、良い名じゃん。『炎』て。
あんた、冷静に見えて、かなりの激情派でしょ?
押し隠そうとしてる、強い意志の炎。
あんたは一族に治まらないし、一族だってアンタを扱えはしないよ。きっと。
だってあんたはそんなもん全部飲み込んじゃう炎を持ってる。
・・・それに、今の反応見てると、弟、大切なんでしょ?
だったら死んじゃ駄目だよ。
あんたの生は望まれてる。生きなきゃ。」
そう言って、ナルトは哀しく微笑んだ。
まるで、自分の生は望まれてないよ、とでも言うように。
「俺の『監視兼護衛』は降りていいよ。
今日の記憶も消してあげる。俺のこと知られると、じっちゃんが困るんだ。」
ナルトは忘却の術を組む為、印を組んだ。
+++++なかがき++++++++++
炎改めイタチ編、第二話。
三話構成。
この連載はうちは兄弟仲良いです。07/08/10 夜烏 白羽