俺には【空白の記憶】がある。




それは四歳になって十六日後の記憶、

ポッカリと数時間だけ空いた【空白の記憶】。

俺はあの日、一体何を見て、そして忘れたんだろうか?












―――だが、一つだけわかることがある。





















































































俺は『異端』だ。







生まれて数ヶ月、

すぐに意識は覚醒し、周囲を理解した。




俺は僅か一歳にも満たない歳で、言葉を理解した。




欲するがまま、

ありとあらゆる知識を頭に入れた。




二歳の時には、分厚い本も軽々と理解できるようになった。




家にある術書から禁書まで、

全てを読みきった。




そして三歳で、俺は自分が『異端』だと気付いた。




一を見れば千も万も理解する『異常』な頭脳、

あまりに強すぎる底知れない『異常』な知識欲、

全てを見抜き暴く『異常』な子供。







奈良シカマルという名の『異端』。







俺という『異端』は平穏を侵した。

気味悪がられ、蔑まれ、避けられ、

唯でさえ、俺が生まれて十九日後に起きた『事件』のせいで揺らいでいる上層部は、

俺に『処分』の命令を下そうとしていた。




だから、俺は自分に言霊を課した。

自分の身を守る為、

普通の子供を演じる為に、

『異端じゃない』子供を、

『無力』な子供を演じる言霊。




考えて、考えた結果。

俺の頭脳を抑えることは無理だと決断を下した。




何故なら理解するものは仕方が無い。

この忌まわしい頭は、勝手に読み解いて理解してしまうのだから。




ならば、抑えるのは知識欲の方だ。




見たがるな、

聞きたがるな、

知りたがるな。




『めんどくせー』、

そう、めんどくさい事なんか、しようとするな。







無気力で全てを『めんどくせー』で片付けてしまう、『無害』な子供を演じろ!










   +++++










―――そして新しい『奈良シカマル』を演じ始めて一年が経ち、

それは起きた。







ある一日だけ、途中記憶が無い。




数時間だけ存在する【空白の記憶】。




俺の脳ミソが覚えていないとか忘れているなんて可愛いことしてくれるわけが無い。

そんなこと絶対にありえない。




確かにあの日、俺は親父に頼まれてすぐ近くの酒屋に日本酒を買いに行った。

(仮にも四歳児に何買わす気だなんて戯言はウチの親には通じない。)

だが気が付けば次の朝、俺は自分のベットの上にいた。







―――結論、『何者かに記憶をいじられた』。







「ならそんな『めんどくせー』事に首突っ込むな。知らないなら知らないでいいじゃねぇか。」




俺の理性が呟く。

だけど、俺はそれを絶対に受け入れられない。
























【空白の記憶】の後、俺が唯一わかること。















ソレが俺を狂わせる。















今まで抑えが利いていた筈の知識欲が、言うことを聞かない。















体中が、俺の全てが、ソレを欲する。


























「 俺は強くならなきゃいけない 。」


























その本能に贖うことが出来ない。
















――― 一体、【空白の記憶】で俺はナニに出逢ったのだろうか?

















+++++あとがき++++++++++
影=シカマル、・・・ぇ、バレバレ?
てか何か展開読めるし。
説明っぽい独白。てか説明書きじゃんこれじゃ。

07/09/12 夜烏 白羽

 

 

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