小さな子供が、月を眺めていた。
子供は静かに目を細める。
月明かりだけが闇を照らす夜。
子供に相応しくない時間帯のはずなのに、
その子供は悠々とそこに存在していた。
闇に溶けそうなほどの漆黒の髪、
全てを射抜いているかのごとく鋭い闇色の瞳。
後ろで緩く結われた髪が風になびいた。
「んじゃ、行くか。」
子供は吸い込まれるように目の前の扉に入っていった。
影2
場所が変わり、暗部第零班待機所。
黒髪の少年、
そして金髪の子供がその部屋にいた。
「イタ兄、『火影書庫室』って知ってる?」
金色の子供―――ナルトは片手で狐面を弄りながら黒髪の少年に問う。
「『火影書庫室』?・・・ああ、アレか。最重要機密文書とかSSS級の禁書とか置いてある部屋か。」
黒髪の少年―――イタチは顎に手を当て答えを導き出す。
その様子に、金色の子供は満足そうに微笑んだ。
「うん。最近何者かが侵入したらしい。」
慌てることなく淡々とした口調。
だが、これは落ち着いて話して良い内容ではない。
それなのに、ナルトは何処か愉快そうにしている。
その様子に、イタチは顔をしかめた。
「一体どうしたんだナルト君。楽しそうにしてるけど、これは里の緊急事態だ。」
問うイタチにますますナルトの笑みは深くなる。
―――あ、何か仕掛けたんだな。
イタチはナルトと出逢ってからの約一年間の経験から直感した。
ナルトは手で遊んでいた面を机に置き、淡々と話し始めた。
「ん。実はさ、書庫には俺が結界を張ってたんだ。
そんで、此間なんか違和感を感じて見に行ったら、微妙に俺が張った結界とは違うんだよね。
いや、同じ結界術なんだけど、・・・何て言うのかな?野生の勘てやつ?
『侵入者か!?』って思ったら盗まれたものは無し。
でも微かに書物を見た形跡がある。しかもかなり前からのや最近のまで色々とね。
詳しく調べたらどうも奴さんは三ヶ年ぐらい前から何度も進入を繰り返していたらしい。
・・・いや、繰り返している。が、正しいね。現在進行形。」
ナルトの言葉にイタチは目を見開く。
ナルトは全ての術において最強と言っても良いほどの使い手だ。
故にナルトの結界はとても高度だ。
破るのは勿論同じ結界を張ることすら困難なのだ。
しかし、侵入者はそれを簡単に破り、いとも簡単に同じ結界を張りなおし、
ナルトに気付かれることなく、三ヶ月の間、幾度となく繰り返していた。
「・・・相手は相当の使い手だな。」
「でも、もう捕まったも同然だよ。」
思わずこぼしたイタチの呟きに、ナルトは自信に満ちた顔で微笑んだ。
「俺が問題を放置しとくなんて阿呆な事やると思う?
とっくに束縛用のトラップを張っといたよ。滅茶苦茶高度なやつ。
あ、でも死なない程度だから安心して、
理由聞かなきゃ元も子もないからね。」
ナルトの言葉にイタチは素直に感心する。
そんなイタチを見て、ナルトは満足そうに笑う。
―――しかし、次の瞬間ナルトの笑みが凍りついた。
「ッ!!!!!」
「どうしたんだナルト君!!?」
ナルトは机の上の面を引っつかみ乱暴に立ち上がる。
反動により、椅子は派手な音を立てて倒れた。
何処か焦ったナルトにイタチは何事かと引きとめる。
「俺の張ったトラップが、破られた・・・。」
呆然としたナルトの言葉に、イタチは信じられないと目を見開いた。
+++++
月明かりのみが照らす、薄暗い部屋の中。
「うっひゃぁ、殺す気かよ。」
窓からこぼれる月に照らされ、子供は呟いた。
目の前には破られた数枚の束縛用術札。
紙に書かれた術式の複雑さから、その札が物凄い高度なものだとわかる。
子供はため息をこぼし、髪をかき上げた。
―――何でバレたんだろ?完璧だったはずなのに。
別に驕りとかそんなのではない。
純粋に子供は疑問に思い首をかしげる。
―――・・・とりあえず、逃げるか。
子供は窓枠に手をかけた、
その時、
―――ん?月に、人影・・・?
「――ッ!!?」
気付いた時には遅かった。
月を遮るように見えていた人影は、真っ直ぐとコッチに跳んで来る。
子供は急いで踵を返し、扉の方に走る。
しかし、扉に手をかける前に扉が開き、そこには別の少年が立っていた。
子供は舌打ちをし、術を発動させようと印を組む。
術を発動しようとした瞬間、後ろから大きな音がした。
振り向くと、先ほどの人影が窓をブチ破って入ってきたところだった。
割れた窓ガラスが
キラキラと舞い
月明かりに照らされ
降り立つ黄金色の髪
黒い装束
そして
禁忌といわれた『狐』面―――・・・
カチリと、
子供―――シカマルの頭の中のパズルに、
最後のピースが埋めこまれた。
+++++あとがき++++++++++
緊 張 感 皆 無 。(泣
駄文極まりない。
戦闘シーンとか上手く書ける様になりたい・・・。07/09/18 夜烏 白羽