飛び散った窓ガラスの破片が、
月の光を反射しながらキラキラと舞い落ちる。
そしてそれにも負けないほどの、強い輝きを放つ子供。
黄金色の髪を揺らし、
白い狐面の奥の蒼い瞳が射抜くように目の前の人物を見据える。
「アンタ、確か奈良家の・・・」
金髪の子供の呟きに、
シカマルは―――密かに口物と吊り上げた。
影3
「君は・・・、」
イタチは驚いたように呟く。
そんなイタチを一瞥して、シカマルはすぐナルトに視線を戻した。
「そうだ。俺は奈良家の『異端』っつうのをやってる。
ま、最近は俺の健気な努力のかいあって『気のせい』ですんでるみたいっすけどね。」
肩をすくめながらわざとらしくため息をつく。
そのふざけた様子に、ナルトは面の下で眉をひそめた。
ナルトは殺気を込め、クナイを放つ。
そのクナイはシカマルを掠めるようにして壁に突き刺さった。
「『健気』ってキャラじゃない気がするな。
それより、今はお前が『奈良家の嫡子』だろうと『異端』だろうと関係ない。
何故ここに忍び入った。何が目的だ。」
シカマルの頬に一筋の赤い横線が走り、
そこからたらりと血が流れ出る。
「ハッキリ言うなよ、つれねぇな。
俺って結構健気だと思うぜ?
だって―――・・・」
シカマルはそこできり、ニヤリと笑った。
今度はナルトにも見えるよう、楽しげに。
「アンタを追い求めてここまで来たんだ。」
その言葉に、ナルトは狐面の下目を見開く。
シカマルは楽しげに続ける。
「俺にはある一部の記憶がねぇんだ。
俺の脳ミソに忘れたり、覚えてなかったりなんて可愛げがあるはずもねぇ。
だから、俺は考えたわけよ。
色々考えて、そんで結論。
俺はあの夜、―――アンタに逢ったから記憶を消された、だろ?」
シカマルは素早く印を組み、二人に影縛りの術をかけた。
「ちょぉっと長い話になるんで、大人しく聞いていてくださいね?」
シカマルは語り始める。
自らが導いた、真実の論理を―――――。
+++++
―――俺は『記憶を消された』と確信した時、疑問に思った。
【誰に】記憶を消されたのか、
【何故】記憶を消されたのか。
【誰に】の方は、簡単に見当が付いたけどな。
『夜の里は暗部の任務場所』、
『暗部の任務を見たものは記憶を消されるか抹殺される』。
これは里に住むものなら誰もが知っている、暗黙の了解だった。
―――ということは、俺の記憶を弄ったのは、暗部。
だが、ここからが重要だった。
俺はここ一年と124日の間で少しは『異端』のイメージから離れた。
とはいえ、まだ『異端』と認識されていることには変わりない。
ここで、一つの疑問が浮かぶんだ。
【何故】殺さず、記憶を消した?
せっかくの正当な理由で殺すことが出来るってのに、【何故】記憶を消した?
俺が奈良家の嫡子だから?旧家の跡取りだから?否、そんな理由はあってないようなもんだ。
上層部の連中は、未だに俺を排除できないか模索している。
俺が少しでも『異端』の気配を出せばすぐさま排除の命を下すだろう。
俺が出くわした暗部が心優しい奴だったからか?
否、暗部は里の中枢に食い込んだ組織だ。
上層部の意向ぐらい知っているだろうし、殺さなかったと知れれば罰が下るだろう。
ということは、『上層部に歯向かえる地位を持つ者が俺の記憶を消した』。
つまり、【誰が】の答えは、
約二年前に彗星の如く現れた歴代最強と謳われし忍、総隊長『戒』。
だが、【誰か】が割り出せたからといって、簡単に【何故】が割り出せるわけではない。
例え相手が『戒』だとしても、疑問は残るんだ。
―――だってそうだろう?
もしも『戒』が快楽殺人者だったら?権力に飢えた人間だったら?
俺は殺されていた。でも殺されなかった。
ならば、『戒』とはどういう人物なのだろうか?
―――わからない。
『戒』についての情報は、徹底的に隠匿されえいた。
【何故】?
『総隊長』という名誉ある称号。
―――例えそれが、事実ただの『人殺し』という意味を持つものだとしても、
それが忍にとってこの上ない誉れだということに、変わりは無かった。
なのに何故、正体を隠す?
『戒』とはどんな人物なのだ。
何故俺を殺さなかった。
殺さずに記憶を消したのは、何故だ。
何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故 何故 何故何故何故 何 故何故何故何故何 故何故 何故 何 故何 故 何 故 何 故 何 故 ナ 故 何 故 何 ぜ な ゼ
ナ ぜ ?
+++++
「今まで簡単に抑えられていた知識欲が、簡単に暴走した。」
シカマルは自嘲気味に呟く。
「ただ、暴走した知識欲、回転し続ける頭の中に、
たった一つ、わかることがあった。
【何故】とかそういう次元じゃねぇ。
本能的に『わかる』んだ。」
シカマルはそこで一端きり、
目の前の存在を見据えた。
万物を射抜く闇色の瞳が、
鋭き賢者の眼光が、
海のように深い蒼の瞳を射抜く。
「俺は強くならなきゃいけない。」
静かに、シカマルは右手を挙げる。
「―――何故なら。」
シカマルの指が、一人の存在を捉える。
指の先、目の前の人物。
「 アンタの隣に立つ為に 。」
――――― な ぁ 、 『 う ず ま き ナ ル ト 』 ?
シカマルの瞳には、
強い『決意』が宿っていた。
全ては金色の神子の為に。
+++++あとがき++++++++++
あ゛〜〜〜〜・・・。
また説明じゃん、しかもかなり読み手側に『読み解き』を求めるし。
【何故】の部分が苦労した。・・・表現しきれてるかな?
シカマル編は全5話予定。・・・終るかな?07/09/24 夜烏 白羽
07/09/25 こっそり修整
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